安倍首相は今年2月の自民党大会で「自治体の6割が自衛隊員の募集に対して協力を拒否している、だから憲法に自衛隊を明記することが必要」と新しい「改憲の理由」を持ち出してきました。もちろんこれは全くのウソで、約9割の自治体は住民基本台帳の閲覧などにより、隊員募集業務に協力していることを、岩屋防衛大臣も認めています。

この首相発言をきっかけに神奈川新聞は自治体の隊員募集業務への協力の状況を調査し、3月13日の紙面でそれを報道しました。


その報道によれば、隊員募集の適格者名簿を紙媒体で提供している自治体は神奈川県内で3市2町であり(その他の多くの自治体は「閲覧」のみで対応)、名簿を提供している自治体の中には、川崎も含まれていました。(川崎市は2017年から、紙媒体で名簿を提供。それ以前は、基本台帳の「閲覧」で対応。)

「安倍改憲NO!オール川崎」では、この市の自衛隊への名簿提供は、住民基本台帳法および市の個人情報保護条例に照らして違法であると考え、3月22日に市に対して名簿提供の中止するよう、申し入れを行い、その後、この問題に対する記者会見も行いました。

私たちの名簿提供中止の要求、また市が何故、2017年から、それまでの閲覧から名簿の提供に方針を変えたのか(その間、関連する法律は全く変わっていないにも関わらず)、その説明の要求に対し、市は4月10日に回答を交付しましたが、その内容は、私たちの要求を全く拒否するものでした。

私たちはこの回答を受けて4月16日、再度の記者会見を開き、市に対する抗議声明を発表しました。


以下に、この抗議声明の全文を引用します。

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 抗議声明        
 2019年4月16日  安倍改憲NO!オール川崎 代表 川口洋一

1 私たちは、2019年3月22日、川崎市に対し、同市が、2017(平成29)年度より、防衛大臣の求めに応じて、自衛隊に対し、自衛隊が求める募集対象者情報(以下「名簿」という)を提供しているが、名簿の提供は違法なので、即刻中止するように求めました。

 私たちが名簿の「提供」を違法と考えたのは、住民基本台帳法11条「国又は地方公共団体の機関は、法令で定める事務の遂行のために必要である場合には、市町村長に対し、当該市町村が備える住民基本台帳のうち第7条第1号から第3号まで及び第7号に掲げる事項(氏名、生年月日、男女の別、住所)に係る部分の写しを当該国又は地方公共団体の機関の職員で当該国又は地方公共団体の機関が指定するものに閲覧させることを請求することができる」としていますが、提供までは認めていないからです。

 また、川崎市個人情報保護条例11条1項は「法令の定めがあるとき」に限り個人情報の目的外使用を認めているが、住民基本台帳法に照らせば名簿の提供は川崎市個人情報保護条例にも違反すると指摘しました。

2 同年4月10日、川崎市当局は私たちに回答書を交付しましたが、その内容は、私たちの申し入れを拒否するものでした。

 川崎市がその理由としてあげたのは、自衛隊法97条1項「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛隊の募集に関する事務の一部を行う」、同法施行令第120条「防衛大臣は、自衛隊の募集に関し必要があると認めるときは、都道県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる」と定めているので、「名簿」の提供は適法であり、川崎市個人情報保護条例11条2項は「正当な行政執行に関連があるとき」に個人情報の目的外使用を認めているので、同条例にも違反しない、というものでした。

 しかし、住民基本台帳法11条が認めるのは「閲覧」までであり、名簿の提供は同法に違反するとの私たちの指摘については全く触れていません。名簿の提供が住民基本台帳法に違反するかぎり、それは「正当な行政執行」とは言えません。川崎市個人情報保護条例11条2項にも違反します。

3 私たちが、自衛隊法施行令第120条は、「防衛大臣は、自衛隊の募集に関し必要があると認めるときは、都道県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる」としているだけで、自治体がその求めに応じることを義務としていないので、「名簿」の提供は、川崎市の意思に基づくことになると指摘したところ、同課長は、否定しませんでした。

 そこで、私たちは、川崎市が、これまでの名簿の「閲覧」から名簿の「提供」に変えた理由を質したところ、同課長は、「総合的に判断した」という回答を繰り返すだけでした。それどころか、今後は書面による質問に対して、書面で回答するが、面談には応じないとして、事実上質疑を打ち切りました。

4 ただ、この重要な政策転換にあたり、川崎市情報公開・個人情報保護審査会にいっさい諮問していないことを認めました。自衛隊への若者の名簿提供を市民に全く知らせず、秘密裏に行ったのです。

 私たちは、川崎市民がこの変更を知っているかを確かめるため、シール投票をしたところ、投票に応じた市民の大半がこの事実を知らなかったと訴えました。また、この場に参加した女性は、長男には来なかった自衛隊からの募集のダイレクトメールが次男に届いで驚いたこと、そして、それが川崎市が情報を提供したからだと知ったことによる衝撃を語り、名簿の提供を止めて欲しいと訴えましたが、同課長は、この訴えも黙殺して席を立ちました。

5 2015年9月19日、安全保障関連法が成立し、自衛隊が海外で武器を使う場面が格段に拡大され、戦闘に参加する可能性が格段に広がりました。自衛隊から勧誘されて入隊することは、戦場に行く第1歩となる可能性が高くなっています。自衛隊への若者の名簿提供は、実質的な徴兵制につながるものです。

 川崎市が、川崎市民に知らせないまま、名簿の「閲覧」から「提供」という重要な政策変更したことに対し、市民の不安に根差した抗議と名簿提供の禁止の要請に対して、川崎市がまともに答えようとしないのは、住民に身近で、その生活を守る自治体としての責務を放棄したものです。

 私たちは、この川崎市の姿勢に厳しく抗議し、自衛隊に対する名簿提供を即刻中止することを要求します。

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市の行っている名簿提供が住民基本台帳法に照らして違法であることは明らかで、実際、これまで川崎市と同様に名簿を提供していた葉山市は、市民からの抗議を受けて、「今後、名簿提供は行わない」と方針を転換しています。

この名簿募集問題は、集団的自衛権を付与されて「米軍と共に海外で戦闘行為を行う可能性のある」実質的な軍隊へと変貌しつつある自衛隊が、一般市民の家の玄関口にまで(子息に対する「隊員募集」のダイレクトメールを通じて)忍び寄ってきている、という現実を象徴しています。

またこの問題は、安倍9条改憲のみならず、個人情報の保護という自治体の重要な使命をないがしろにし、まさに「国家のために個人を従わせる」という、自民党改憲案に通底する「国家主義」「個人の人権無視」を象徴する問題でもあると思います。

「安倍改憲NO!オール川崎」では、今後ともこの問題に全力で取り組んでいきます。